債務整理|貸金業者による過払い金の告知義務について

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主文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実 及び 理由

第1 請 求

被告は,原告に対し,金7万7549円及びこれに対する平成7年6月19日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 請求の原因の要旨
(1) 原告と被告は,平成4年10月ころ,金銭消費貸借にかかる契約を締結し,これに基づき,原告は,消費者金融会社である被告との間で,平成4年10月26日から同7年6月19日まで継続的に金銭を借入及び弁済をするなど,被告と継続的な貸付け取引を行った。
(2) 原告は,被告から借り入れた金員について,利息制限法所定の利率を超過する利息を支払ってきたが,これを同法所定の制限利率に基づいて引き直し計算をし,過払利息分を元本に充当すると平成7年6月19日の時点で,金7万7549円の過払い金が生じている。
(3) 被告は,本件取引にかかる原告の債務が消滅していたことを知り,又は過失により知らないまま,原告に対し,債務が存在するとして支払いを請求し,過払いになることを告知せずに,弁済を受領した。
(4) 受領権限がないことを知りながら,相手の無知に乗じて法律上義務のない支払いをさせた被告の行為は,社会通念上,著しく相当性を欠いており,不法行為を構成する。
(5) 原告は,上記不法行為により,過払い金7万7549円に相当する損害を蒙った。
そこで,同金員及び継続的不法行為の終了日である平成7年6月19日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員の支払いを求める。
2 被告の主張
(1) 原告に支払いを請求した行為が不法行為を構成することについては,否認もしくは争う。
すなわち,被告は,貸金業法43条にいうみなし弁済の要件中,特に,@原告が任意に支払いをしてきた事実,A同法17条書面,18条書面を交付してきた事実を基に,みなし弁済の要件を充足しているものと考えていた。
(2) 被告には,過払い金発生の告知義務はないし,原告に対する権利侵害もない。

第3 当裁判所の判断

1 不法行為の成否について
(1) 本件の金銭消費貸借について,被告が原告に対して行った弁済の請求は,充当計算の結果,元本がなくなるまではその一部は存在しない債務にかかるものであり,元本がなくなった後は,その全部が存在しない債務にかかるものであるということはできる。
しかしながら,本件のような比較的長期にわたり,借入と返済を繰り返す継続的な金銭消費貸借にあっては,不法行為の成否を検討するにあたり,充当計算に当たって,貸金業法にいうみなし弁済の成否等を検討する必要があると考えられる。
(2) みなし弁済については,最高裁18.1.13判決がされるまでは,期限の利益喪失特約の下では,特段の事情のない限り,みなし弁済の成立要件である任意性を欠くという見解が必ずしも一般的であったということはできず,少なくとも,上記最高裁判例以前は,取るべき充当計算方式が必ずしも一義的であったということはできない。
従って,利息制限法超過利率による利息分を同法の制限利率に基づいて引き直し計算をし,過払利息分を借入元本に充当すると過払い金の発生が認められるからといって,即,被告に,原告に対する権利侵害について故意又は過失があったということには結びつかず,貸主が制限利率超過の約定利率に基づく利息及び元本を請求した行為が,常に違法性を帯びて,不法行為を構成すると解するのは相当ではないというべきである。
(3) また,貸主である被告のかかる請求は,一応,借主である原告との利息に関する合意に基づくものであって,充当計算をせずに,利息制限法所定の利率超過の約定利率による利息及び元本の支払請求をする行為が,相手の無知に乗じて法律上義務のないのに支払いをさせる行為と評価され,違法な行為として不法行為を構成すると解するのも相当ではなく,貸主の当該取引におけるみなし弁済の成否と過払い金発生の可能性に関する認識,いわゆる17条書面や18条書面の交付状況などの事情も参酌し,貸主の請求が社会的相当性を欠くと認められる場合に,不法行為を構成すると解するのが相当である。
(4) これを本件について見ると,貸金業者である被告が,グレーゾーン金利を徴収していた事実が認められるが,証拠によれば,同法17条及び18条書面を整備して,取引全期間にわたり原告に交付していた事実(乙1号証〜乙34号証)が認められること,その間,原告に対し,支払いを強制するなどの強制手段をとったことは認められないこと等を前提に判断すれば,被告が,貸金業法43条の適用があるものと考えて,原告から弁済を受けていたことが推認できるというべきである。
また,仮に,17条書面,18条書面や任意性の要件の不備等から,貸金業法43条のみなし弁済の規定が適用されず,結果として有効な利息の債務の弁済とみなされないことがあるにしても,上記の事実から判断すれば,貸金業者である被告に,原告から制限超過利息を受領したこと自体が,原告の権利を侵害したものと解することには無理があるし,取るべき充当計算方式が必ずしも一義的であったということはできない当時の状況下における事情から判断すれば,被告に,過払い金発生についての告知義務があるということもできないというべきである。
2 そうであれば,貸金業者である被告には過払い金発生についての告知義務があるにもかかわらずこれを告知せず,利息制限法所定の過払利息を請求し収受した行為が違法であり,被告が受領権限のないことを知りながら,相手の無知に乗じて,原告に法律上義務のない支払いをさせたということはできないというべきであり,被告のかかる行為が,社会通念上,著しく相当性を欠くとすることはできない。
3 よって,被告に不法行為は成立しないというべきであり,原告の請求は理由がないことになるから,これを棄却することとする。

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